「させていただきます」の使い方には気をつけろ!③

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今回のテーマ

前回に引き続き、今回も「させていただきます」の誤用例について解説します。

今回は「(仕事や業務を)させていただきます」について解説します。


「させていただきます」の基本的な使い方の解説は以下のリンクをご覧になってください。
「させていただきます」の使い方には気をつけろ!①

「させていただきます」の誤用例解説の最初の記事は以下のリンクをご覧になってください。
「させていただきます」の使い方には気をつけろ!②


誤用例③「(仕事や業務)をさせていただく」

最近、テレビの取材等で働いている若者にインタビューするシーンが見られます。

そして、自分の仕事を説明する際に、「~~という仕事をさせていただいております。」や「会社に~~という経験を積ませていただいています」などの受け答えをしている場面が見られます。


これらの「させていただきます」には「させていただきます」の使い方に関する問題もあり、更には、敬語の根幹概念に関わる問題があります。



「させていただきます」の使い方の問題

「~~という仕事をさせていただいております。」と「会社に~~という経験を積ませていただいています」 のどちらも、客から特に許可を受けて、仕事をしているわけではないので、基本的な「させていただきます」の使い方のルールを守っていません。



あまり例は無いですが、無理矢理これらの表現を言うとしたら、以下の場合でしょう。

今対応している客のお陰で、現在の仕事につけたために恩恵だと感じている場合です。
つまり、客が過去に自分を助けてくれて、今の仕事が出来る場合は使っても問題ないでしょう。(この場合、客は自分の恩人です。)


更に、百歩譲って、次のような場合もあります。

(今、あなたのようなお客様が居て、あなたがお金を払ってくれるから、私は給料をもらえます。あなたによって仕事が生み出されて非常に恩を感じます。だから、)「~~という仕事をさせていただいております。」
(この場合の客は通常の客で、あなたの恩人ではありません。)


以上のような心情を、日本語学習者の皆さんが持っていれば「 ~~という仕事をさせていただいております。」 を使っても良いのです。


しかし、このような心情は、非常に卑屈過ぎると考えます。社長や役員などの企業幹部なら、このような心情があっても良いでしょうが、普通の従業員には重過ぎます。
通常、このような心情を持って仕事をしている従業員は稀でしょう。

したがって、過剰な敬語表現であると言えるでしょう。


もしかして、日本の若者が以上のような、非常に卑屈な感情を持って、 「 ~~という仕事をさせていただいております。」 と言っている可能性があるかもしれません。
しかし、本当の理由は、日本人の敬語に対する理解不足が原因であると考えられます。



敬語の根幹概念に関わる問題

「させていただきます」は謙譲語ですので、自分を低めて相手を高める表現です。


したがって、 「~~という仕事をさせていただいております。」と「会社に~~という経験を積ませていただいています」 は、仕事をさせてくれる会社を高めてしまっている表現になるという意味でも不適切です。


会社とは、自分側の存在なので、謙譲語は不適切だといえるのです。



適切な言い換えは?

「という仕事をしています。」、「会社で~~という経験を積んでいます。」で十分です。


まとめ

今回も「させていただきます」について解説しました。


複雑な内容ですので、質問や疑問がある場合は遠慮なくどうぞ。