「させていただきます」の使い方には気をつけろ!①

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今回のテーマ

昨今、日本では「させていただきます/(せていただきます)」という言葉が、ものすごく頻繁に使われています。


実はこの敬語自体は間違いではないのですが、間違った場面で日本人がよく使ってしまっています。



そして、日本語学習者は日本人の真似をしてしまいますから、、、間違いの魔の手が日本語学習者を襲っているのです!(させていただく か せていただく、どちらを使うかは動詞によって異なります。)



今回は、「させていただきます」の正しい使い方について解説します。さらに、間違って使われる「自己紹介させていただきます」についても解説します。



これを覚えればアナタは日本人より日本語が上手になるかも!?





解説

「させていただきます」が使える条件

「させていただきます」(させていただく)が使えるのは(1)相手の許可により、(2)自分が恩恵を受けられる、場合にのみ使用可能です。
例を挙げてみましょう。


①(先生に家に招かれて、食事をご馳走になる時、)
先生:「さあ、召し上がれ」(許可の言葉)
生徒:「では、先生、食べさせていただきます」(食事は生徒にとって恩恵)

②(知人に道具を借りた時)
知人:「では、この道具を使ってください。」
自分:「はい。ありがとうございます。使わせていただきます。」




さらに、相手の許可を受ける前に使うと、「相手の意思を無視して、自分のしたいことを強行する」言い方に変化します。

もし、あなたが、敬語を用いた丁寧な表現で、相手の意思を無視しつつ、相手に影響を及ぼしたいなら、この表現は適切です。例を挙げてみましょう。


①(税務署の人が)「去年、あなたはいつもより沢山お金を稼いだので、より多く税金をとらせていただきます。」


②「この成功は、大部分は私の努力によるから、利益の半分は私が取らせていただく。」

③(怪盗が美術館から美術品を盗む時、警備の警察を嘲笑いながら逃げる時、)「ははは、無能な警察供め!このダイヤモンドは私が盗ませていただく!」




これら以外の状況で使うと、不自然な場合があります。日本人は、このルールを知らずに「させていただきます」を濫用しています。また、相手の許可を得ていないで使うと、相手を不快にさせる危険性を孕んでいます。


無理に条件に当てはめて、使用することも可能なのです。しかし、そうするより、もっと短く、楽にかつ、丁寧な表現があります。


日本人も日本語学習者にも当てはまりますが、単純に別の言い方を知らないだけで、その別の言い方を知っていれば、「させていただきます」を使わずとも話せるようになります。


日本語学者の菊地康人は「過剰な敬語」と称しています。




誤用例1「自己紹介させていただきます」

猫は愛らしいのに、この女の子は冷たい(笑)



この表現は皆さんも一度は、何かの発表の場面で言ったことがあるのではないでしょうか。学習者の間では「長く、敬語を使った表現で、なんとなく、かっこいい」と思っている人もいるようですが、あまり美しい表現とはいえません。


また、学習者を指導すべき先生方も、この表現が間違いであることに気づいていないようで、あまり訂正されていないと聞いています。


では、なぜこの表現は不自然なのでしょうか。


まず、自己紹介とは、誰かに許可されることですることではなく、自分がしなければならない行為だからです。許可がなくとも、発表等の場面において、皆さん名乗ることが求められているのです。
加えて、自己紹介だけで、何らかの恩恵を受けるのも稀でしょう。

皮肉を言う教授や上司ならこういうかもしれません。「自己紹介しなくてもいいよ。頼んでないから(笑)。」

自己紹介する時は「自己紹介します。」や、「自己紹介致します。」だけで十分なのです。






「自己紹介させていただく」が使える場面は?

「自己紹介させていただく」自体は文法的には間違っていません。ただ使う場面を間違えています。

使える状況とは、、、

①自己紹介したくても出来ない状況で、誰かに「自己紹介をしたいなら、してもよいですよ。」と言う風に許可を受け、相手に対して敬意を示したい場合。

②偉く、権力があったり、お金を持っている人で、挨拶したら、将来自分に利益がありそうな人に自己紹介するとき。(自己紹介をして名前を覚えられたら、恩恵があるかもしれませんから)

以上の2つの場合があると想定されます。
①は、文法通りなのでわかりやすいと思います。②に関して注意が必要なので解説します




実力者? 偉そう?


そもそも、偉い人はアナタの自己紹介を聞いている程、暇がある?


上でも述べたように、自己紹介や挨拶は許可を受けてするものではなく、自分から進んで行うものです。
ですから、単純に「私の名前は~~です/と申します」と言えばいいのです。


これだけなら、相手がアナタの話を聞く時間の余裕があれば、可能です。「申します」だけでも謙譲語なので、十分敬語です。





しかし、「偉い人で、将来恩恵を受けるかもしれないから、どうしても、させていただきますを使いたい」という、そこのアナタにも解決策を示しましょう。



一般的に偉い人は忙しいので、通常は部外者であるアナタと話す時間はないのです。つまり、アナタは自己紹介をする時間を与えられていない、つまり、自己紹介をすることが許されていないのです。



そのような状況の中で「自己紹介させていただく」と言ったなら、どうなるでしょう??



厳しい性格の人なら、「いや、勝手に自己紹介をしないで、忙しいから」や「名前を教えてくれといった覚えはないんだけど」と一蹴されてしまうかもしれません。



記事の上の方にも書いたように、許可なしで「させていただきます」を使うと、「相手の意思を無視して、自分のしたいことを強行する表現になることを思い出してください。怒るのも当然でしょう?





怒らせない「させていただきます」の言い方は?



怒らせない言い方とは?? 結論から申し上げましょう! 要は、疑問形で言えばいいのです!例を挙げてみます。


「自己紹介させていたただいてもよろしいでしょうか。」
「自己紹介させていただいても構いませんか。」
「自己紹介させていただきたいのですが、、、」(→厳密には疑問ではなくて、相手の反応を見る表現。)


疑問系にすれば、勝手に自己紹介することにはならず、許可するかどうかを相手の判断に委ねられて、承諾することも拒否することも出来ます。承諾されたら、大いに自己紹介して、顔を覚えてもらいましょう!!!




色々解説したけど、、、

許可なしで「させていただきます」を使えば、相手を怒らせるかもしれないでしが、もし相手が優しい人なら、「させていただきます」と言っても怒らないと思うので、結局は相手の性格次第かもしれません(笑)


まとめ

「させていただきます」にはルールがあって、なんでもかんでも使えるわけではない。
怒らせないためには、疑問形にせよ。

次回は他の誤用例について解説します。次回も是非読んでください。


First picture: Photo by Sebastian Herrmann on Unsplash
Third picture: Photo by Constantinos Panagopoulos on Unsplash