会話をスマートにする! 無意味な言葉を削ろう!④

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今回のテーマ

文法的に正しい言い回しであっても、実際に書いたり、話したりすると話の聞き手が話し手に対し好ましくない印象を持つ場合があります。

第四回も渡辺由佳の 「会話力の基本」( 日本実業出版社より 2011年出版 )を引用し、原本よりも詳しい解説を行います。

余計な「とかって」・「とか」を外す。

二つの例文を引用します。

A

海外旅行に行く相談を友人としている際、

「うちの親とかって、女同士で海外に行くのは危ないとかって言うのよ」

渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.15. 

B

両親が、女同士での海外旅行は危ないって言うのよね」


渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.15. 

「とかって」や「とか」は一度使う癖が付くとなかなかやめられない言葉です。

明らかなように「とかって」は、この文中では意味を持たない言葉です。

意味を持たない言葉を削除すると美しく、伝わりやすいです。

「とかって」・「とか」の解説

「とかって」や「とか」のこの不必要な用法は1990年代から若者に使われ始めて、次第に上の年齢層にも使用され始めました。

辞書にも、若者言葉という但し書き付きで、表現の「断定の調子を避けて和らげる」とあります。

例文
「まだ用意とか出来ていない。」
「嫌だなとか思わない?」
「学校とかから帰る。」

すなわち、これらの例文は「とか」を外して書くことが出来ます。

「まだ用意出来ていない。」
「嫌だなと思わない?」
「学校から帰る。」

上記の例文のような場合は会話で許容されています。公的な会話(市役所等で担当者と話すことや、店頭で担当者と話すこと等)でも使われています。

なぜ、断定の調子を和らげるのか?

本来の「とか」

「とか」は本来、「事物や動作・作用を例示的に列挙する」意味を表す副助詞(もしくは「並立助詞「と」+副助詞「か」)です。

例文
「ドイツとかフランスとかイギリスとかいったヨーロッパの国」
「寿司とかラーメンとかいった代表的な日本料理」

以上の例文のように使います。

つまり、「ヨーロッパの国」について挙げる際に、1国だけを指定しないで「ドイツ」・「フランス」・「イギリス」と複数の例を挙げて、断定をしていないのです。

同じく、「日本料理」について「寿司」と「ラーメン」を挙げて、一種類への断定を避ける文構造になっているのです。

『本来の「とか」』の語源

さらに、「事物や動作・作用を例示的に列挙する」意味をを表す副助詞 の「とか」は元々は、「不確かな伝聞や想像」を表す連語(格助詞「と」と副助詞「か」の組み合わせ)でした。

この 「不確かな伝聞や想像」 を表す「とか」から「 事物や動作・作用を例示的に列挙する」意味をを表す 「とか」が発生しました。

例文
「田中とかいう人が来た。」
「明日から有給休暇だとか言っていた。」
「病気になったとかで休むそうだ。」

新しい「とか」とは何であるのか?

このような語源の背景があるために、「断定の調子を避けて和らげる」という新しい使い方が現れたと推測されます。

したがって、そのような「とか」は意味の背景に「不確かな想像」さらに「想像した内容の例の表示」があるといえるでしょう。

例文で確認しましょう

「まだ用意とか出来ていない。」 (例えば外出前)
→聞き手に対する「不確かな想像」で「用意」や「準備」や「支度」等の言葉が頭の中に表れ、「代表例」として、発言者は「用意」という言葉を選択しました。他の「準備」や「支度」等の言葉は「とか」に集約され、代用されたと考えられます。


「嫌だなと思わない?」 (例えば、学校の宿題)
→ 聞き手に対する「不確かな想像」で 「嫌」や「面倒だ」や「やりたくない」 等の言葉が頭の中に表れ、「代表例」として、発言者は「嫌」という言葉を選択しました。他の「面倒だ」や「やりたくない」等の言葉は「とか」に集約され、代用されたと考えられます。



「学校とかから帰る。」
→ 聞き手に対する「不確かな想像」で 「塾」や「買い物」や「アルバイト」 等の言葉が頭の中に表れ、「代表例」として、発言者は「学校」という言葉を選択しました。
皆さんも学校に行くついでに、帰りには色んな場所に寄りますよね!

一番最初の例文を検証してみる

海外旅行に行く相談を友人としている際、

「うちの親とかって、女同士で海外に行くのは危ないとかって言うのよ」

渡辺由佳, 2011 「会話力の基本」日本実業出版社 p.15. 

「うちの親とかって」とありますが、発言する人は「親」以外存在するということは考えられないですね。
無理矢理考えて、「親戚」、「他の友達」、「近所の人」でしょうか??
いずれにしろ使わないほうがいいですね。

「 危ないとかって」とあります。他に「大変だ」や「不安だ」等が考えられますね。許容の範囲ではありますね。

結論としては許容の範囲ではあるが「とかって」が無いほうが文章としては簡潔で美しいということが言えそうです。

まとめ

新しく発生した「とか」は文法的背景があるので、許容される範囲だとは思います。

しかし、不必要に付けると文章の美しさ、簡潔さが失われるので気をつけましょう。

質問等があれば遠慮なくどうぞ!